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【金儲けの哲学】『ユダヤの商法』に令和の時代を生き抜く術を見た ~ 起業家・藤田田 誕生前夜① ~

不世出の起業家・藤田田が「ユダヤの商法」に開眼するまで

人生「仕事(貯金)× 時間=巨大な力」

 1年間は12カ月だから40年といえば、12カ月×40年間で480カ月。その間に積み立てた元金の総額は480カ月×10万円で4800万円。これが毎年、複利預金で回っていくわけだが、利回り後の貯金額のトータルは、91年4月現在でなんと「2億1157万6654円」に達している。元金4800万円の5倍近い増え方である。

 参考までに計算してみると、藤田の定期預金が約1億2000万円になるのには30年間かかったが、この2億1157万円になるのにはたったの10年間しかかかっていない。複利預金の増え方をまざまざと見せつけるものだ。今後、毎月10万円貯金を続けていれば1億円貯まるのにかかる年数が8年、5年とますます短期間になっていくのは間違いない。

「私は、息子の元(現・藤田商店社長)に、『この貯金は、私が死んだあとも100年間続けてみろ』と言っているんです。親、子、孫、3代にわたって続けることになるかもしれませんが、そうすればどうなるのか——。私のように粘り強い日本人がひとりくらい存在していても面白いのではないか」

 藤田が始めた10万円貯金は令和2年で70年目に入った。現在のようなマイナス金利時代ではさすがに預金額は増えないだろうが、トータルでは5~7億円程度にはなっているのではないだろうか。

 藤田は、人生が「仕事(貯金)× 時間=巨大な力」であるということを、定期預金を通じて証明しようとしていたように思う。《第2回へつづく》

 

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中村 芳平

なかむら よしへい

外食ジャーナリスト

外食ジャーナリスト。1947年、群馬県生まれ。実家は「地酒の宿 中村屋」。早稲田大学第一文学部卒。流通業界、編集プロダクション勤務、『週刊サンケイ』の契約記者などを経てフリーに。1985年学研のビジネス誌『活性』(A5判、廃刊)に、藤田田の旧制松江高等学校時代の同級生を中心に7~8人にインタビュー、「証言 芽吹く商才 人生はカネやでーッ! これがなかったら何もできゃあせんよ」を6ページ書いた。これがきっかけで1991年夏、「日本マクドナルド20年史」に広報部から依頼されて、藤田田に2時間近くインタビューし、「藤田田物語」を400字約40枚寄稿した。今回、KKベストセラーズの「藤田田復刊プロジェクト」で新しく取材し、大幅に加筆修正、400字約80枚の原稿に倍増させた。タイトルを「藤田田 伝」と改めて、『頭のいい奴のマネをしろ』『金持ちだけが持つ超発想』『ビジネス脳のつくりかた』『クレイジーな戦略論』の4冊に分けて再収録した。現在、外食企業経営者にインタビュー、日刊ゲンダイ、ネット媒体「東洋経済オンライン」「フードスタジアム」などに外食モノを連載している。著書に『笑ってまかせなはれ グルメ杵屋社長 椋本彦之の「人作り」奮闘物語』(日経BP社)、『キリンビールの大逆襲 麒麟 淡麗〈生〉が市場を変えた!』(日刊工業新聞社)、新刊にイースト新書『居酒屋チェーン戦国史』などがある。

 

 

 

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